An "I " Novel from The City Of Angels

Diary 『バンコク在住日本人ギタリストの日記』

対等であるということ (アムステルダム後記)

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アムステルダム/デンハーグの旅から一年経った。人間関係的にいろいろなことがあって残念ながら結果的には苦い思い出が多くあまり良い旅ではなかった。しかし、時間が経って少し消化されてきたようなので、その時に感じたことを書いてみることにした。

アムスといえばコーヒーショップにレッドライト、平たく言えばマリファナに売春ってイメージを持っていた。歴史あるヨーロッパの国に行くってのにかなり失礼な話である。とはいえ、実際に観光の目玉であるので駅を降りて街に出た瞬間からマリファナの匂いがしていた。自国の法律ではで禁じられていることが合法であるというのはそれだけでカルチャーショックだ。マリファナだけではなくハードドラッグの個人使用に関しても寛容なので、街を歩けばコカイン売りがけっこう大っぴらに声をかけてくる。大きな教会を中心に放射状に広がる飾り窓地帯では大柄なお姉さんたちが昼間っからお客さんを誘っている。なんじゃこりゃ!?って感じだった。

着いて2、3日の間はその非日常的光景を見て歩くことで費やされた。街並みは数百年前から保存された石造りの建物でとても美しいが、システマティックできっちりと管理されている。警官がめちゃ厳しい。ルール違反で物凄い勢いで怒られてる観光客を何度も見た。自由である代わりに全ては自己責任でルールに反するととことん厳しいのだ。2mクラスの巨漢の警官が怒鳴り散らす光景はなかなかの迫力だった。

日が経つにつれ観光地に飽きて周辺のエリアを歩いた。気になったのは観光エリアと通常エリアの明らかな温度差。住民はいたって真面目に整然と美しい街の中で日常を過ごしていて、乱痴気騒ぎをしているのは観光客ばかり。禁じられるからこそやりたくなるってのはほんまやねんな…と。一緒に行った友人は『成熟している』と表現してたけど、俺も同じようなことを感じた。過剰に保護されなくても人はそれぞれが正しいと思う道を進むのだ。破滅を選ぶのも自由。大人だ。

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初めてヨーロッパに行ったので感じることはいろいろあったが、今になって良く思い出すのは、カフェで注文をするときに女性の店員さんにたしなめられたことだ。この出来事が一番印象に残っているし、日本人独特の長年の間違えた考えを正してもらったような気がしている。

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俺はカフェに入ってカウンターで注文をした。

『アメリカンをひとつ』

すると黒人の若い女性店員が腰に手を当ててあきれたような顔で言った。

『こんにちわミスター。まずはあいさつでしょ。私は機械じゃないわよ』

『ああ!すまない。こんにちわ』

すると彼女は笑顔になって

『こんにちわ。アメリカンね。あなた日本人?』

『そうだよ』

『楽しんでる?ちょっと待っててね。すぐ作るわ』

会話の内容はこれだけだ。でもずっと憶えている。サービスを受けるのが当たり前だと思っているので初対面の人に対して目を合わさず挨拶もしない。ひじょうに傲慢な態度であるし、そのことに気づいてすらいなかったことがとても恥ずかしかった。

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そんなわけで、この出来事だけでも俺にとっては行った意味があったなぁと今は感じている。シンプルに挨拶ってのはだいじなもんだと今さら知ったわけである。

 

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俺のやっている音楽は少し変わっているので少々変わった若い連中に良く会う。彼等は基本的に変わり者で内向的で愛想が悪い(笑)なんだかんだ話していて何かアドバイスを求められると最近は決まってこう言う。

『ステージに出て行ったら演奏を始める前に無言でもいいから一礼するんだ。音楽について言うことは何もない。オリジナルは好きにやるのが一番だし君のやりたいことは君以外の誰にもわからない。そして、演奏が終わったら最後にもう一度礼をするんだ。それだけで反応が少し変わる。お客さんと時間をシェアするんだ』

以前から言っていたし実践していたことだけど、本当の意味で理解したのはアムステルダムで出会った俺よりだいぶ若い女の子のおかげである。少しはマシになったと思っていたがまだまだダメ人間である。日々精進。