An "I " Novel from The City Of Angels

Diary 『バンコク在住日本人ギタリストの日記』

8 days a week

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今夜は歓楽街パッポンのゴーゴーバーBLACK PAGODAで開催されるロックなパーティー【THE LAST GONG】WOOT ROOTとして出演。先週土曜からライブ4本。うち6日間は昼の仕事も普通にしていたので現在おっさんはマックス疲労困憊だが最後に出る元パンクスで現在エレクトロをやっているファランの友人が軽くギターを弾いてくれと言う。今夜の俺の出番は最初なので待ち時間が長いし仕事でもないし面倒極まりない。基本的にインディーバンドマンと音楽フリークの友人というのはろくでもない頼みしかしてこないもので、俺の職業的音楽活動においてはマイナスしか生まない。金銭面であきらかにマイナスで、現場での扱いも悪い。向こうはその場でしっかり稼いでいたりするのであきらかにうまく使われているわけで気分も悪い…にもかかわらず頼みを断らないってのはもはや悪癖の類で自分でも意味が解らない。考えなしにやりすぎて現在生活に思いっ切り悪影響が出ているので、いい加減にせなそのうちほんまに死ぬなぁとリアルな飢えを感じつつ自己マネージメントについてシビアに反省しているまっ最中である。今月はひどい状況だ。ライブをやるほど追い込まれていく。腹が減った。飢えるって本当にしんどい。思考が荒れるし省エネの為なのか視野が狭くなる。数カ月かけて蓄えた贅肉がもうほとんどなくなった。

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さておき、水曜に出演していた Fatty's の主でミュージシャンのマシュー・フィッシャーが今日は出演者。彼のギターの音色を聞くとアメリカのルーツ音楽をしっかり消化しているなぁと…っていうかアメリカ人なので彼にとっては自然にあるものなんだろうけど、弾き方とか佇まいとかいろいろ感心してしまう。今夜はフルバンドらしいので楽しみだ。ルーツがあるってのは揺ぎ無い安心感があって良い。

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映像のSofar Soundって企画は洒落てたし面白かったし出演してみたかったが、スポンサーが付ききらずあっという間に終わった。理想主義で良い空気感のイベントだったので残念だが、商売っ気がないからこそ良い空気で、だからこそ終わってしまったわけで、いろいろ難しいもんである。昨今は音楽は最近はファッションとセットになった一種のオシャレアイテムなのでミュージシャンもイメージ戦略やら人付き合いで大変だ。肝心の音楽を練っている時間すらないだろう。

この前もPokさんといろいろ制約が多くて目的が濁るから店じゃない場所でやる方が良くない?ってな話をしていたんだけど、スポンサーだとか店だとか金絡みのいろいろな奴らに対してうだうだ考えてるうちにいつの間にか肝心の中身について忘れられているみたいな事が多すぎるし、いっそバンコクではそこら中にある廃ビルの一室を一晩借りてシンプルにスペース+サウンドシステム+アーティストで酒は主催が売るってのがええ感じちゃうかな…とかね。まあ言うのは簡単やるのは大変。

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とりあえず今夜もノイズセット。いってみよう♪

 

Become alone

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別の街にツアーに出ると必ず返ってきた後でもやもやする。それは初めて同じようにツアーに出た時から同じだ。街でイベントやパーティーに音楽を見に集まる人たちは皆似ている。そして大概音楽を良く聞いていて、今まで聞いたり見たりした様々な音楽と比較しながらより深いものや先鋭的なアプローチに感嘆する。小さな町では違う。いつもはライブに集まらないような人が来ていることが多いので、よりシンプルでハッキリした効果を与える音を奏でる必要がある。それはみんなが知っている歌とかいう安易なことではなく、あらゆる人に同じように届く音という意味だ。音楽を良く知っている人にも知らない人にも平等に届く演奏だ。街でばかり弾いていると気づかないうちにこねくりまわしてしまって見えにくい音になる。今回もお客さんたちの反応でそれをダイレクトに感じたもので、途中でやり方を変えようとしたが完全には切り替えがきかなかった。もう何十年も弾いていて理解していたつもりがまだできていないのか…と自分のふがいなさにもやもやしたのだ。ホームで演奏をしているうちにいつのまにかゆるんでいた背中のゼンマイをギリギリと巻きなおさなくてはいけないようだ。ただ、細かい部分ではギターは年始より確実に上手くなった。トラックのバランスやデザインも以前より整っている。でも、だからなんなんだ?って感じが最近常にしているし、そろそろシーソーを逆に戻す時期なんだろう。技術ではなく表現に振り切った演奏に。

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この街では色々なタイプのハイレベルなミュージシャンと出会うが、おれのやりたいことはどうやらミュージシャン的ではないようで、その距離は年々開いていっているように感じる。もちろん基礎技術やハーモニー等々学ぶことは多いし皆を見習っている部分は多いし、それは今からも変えるつもりはない。しかし、ソロステージは自分だけのものなのだ。もっと自分の思うがまま演奏するべきなんだろう。ミュージシャンであろう、上手くやろうとし過ぎてコアな部分が出ていない。それが今回ツアーで得た結論だった。俺はギターインプロヴァイザーなのだ。それで良い。

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Trip In Chiang Mai 後記(少々毒入り)

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TOUR  DAY.3  Thapae East - venue for creative art-

もう3回目の出演になるThapae East - venue for creative art- にてソロかと思いきや数日前に突然パーティーに変わった。もう通いなれた感じもあるので何の問題もなくゲストハウスについてチェックインして荷物を整理して会場へ。

会場は既に準備が整っていてフードコーナーが設営されていてフリーフードにフリードリンクが振舞われていた。幟まで立っていてそこにはTED CHIANGMAIの文字が…あれ??ライブイベントじゃないのね…と思いつつパーティーは始まったわけだが、やはりなんか雰囲気が違う。どう見ても音楽のイベントじゃないなこれ…どないやねん?と始まった2組の地元ミュージシャンも少し散漫な演奏。まあいいや。俺はいつものようにしっかりやろう、とセッティングを終えて演奏を開始しようとすると外でマイクで喋るから少し待っててねと言われて待機…しようと思ったがなかなか始まらないし目の前には結構な数の若いお客さんが演奏を待っていてくれてけっこう集中しているし、時間も既に少し押している…と思ったら手が動いて勝手に弾き始めていた。最初の5分間でみんなが身を乗り出す感じが伝わって来た。『よし。いい感じで掴んだぞ。いける』と思ったら外から入って来たオーナーに演奏止められた。そこから30分以上店の外でああだこうだと地元の名士やファランの商店主達のご挨拶。その間ひたすら待たされる俺と会場内の音楽を聞きに来てくれた若いお客さん達。外と内でお客さんの目的と年齢層が完全に分離していた。プラスティック製品を使わないようにしましょう!ってのは良いお話だけど正直邪魔だし商売っ気が強すぎて嘘臭い。タイに来てから適当なのと金持ちの偽善臭さにはだいぶ慣れたけど、1カ月前からこの日にライブブッキングしていたわけだし、後から乗って来て好き勝手するのやめてくれんかなおっさん…とさすがにイラつく俺。見てくれていたチェンマイの女の子が送ってくれた下の写真でも顔の端々に微妙に怒っている感じが…(笑)

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軽く30分以上は経って俺の演奏予定時間が終わった頃に『さあ張り切ってどうぞ!』って言われたけど、カバーやコピーちゃうし一度無理に断ち切られた集中力とか道すがら作ってきた1時間セットの構成のイメージも壊されてしまったし、もう一度弾きながら並行して組みなおすのが大変やっちゅうねん。ああ、もちろんやるよ。見に来てくれてるし。でも俺は『タダ酒飲んで小屋にも入らずに自慢大会してるお前等の為に弾いてるんちゃうんやで~目の前の若い音楽好きの為に弾くんやで~俺はお前らに今回一緒にやりたいとは一言も頼んでへんし、ノイズセットやって今回も警察呼んだろかこの礼儀知らずの田舎者ジジイ共が…』と黒い怒りが荒れ狂う心中を抑え込んで再度ご挨拶して『じゃあ、もう一回集中して音楽を』と、演説中にじっと演奏の再開を待っていてくれた皆さんへのMCと共に演奏開始。

まあなんとか怒りを演奏に出さずにやり切った…はずだ…多分。部屋の中は満員でしっかり聞いてくれたので良かったが、最初に切られたセットの導入部がとても美しかったのでその続きのセットは幻になってしまったわけで残念だった。マネージメント無しで全ての場を整えるってのは本当に難しいと痛感したステージだった。とりあえず近所の集会なのかライブをやるのか目的ははっきりしたほうが良い。付け合わせに使われるのはほんまに好かん。だいたいプラスティックストローより前に解決すべきことがこの国には山のようにあるだろう。結局プラスティック製品の代替品を売りたいだけの偽善者ばかりだった。薄っぺらくて反吐が出るぜ。最後にサックスバンドがセッションしていたのでいきなりラストに直でアンプに突っ込んで乱入(笑)『やっほ~い!』って感じで弾いて明るく終了。いくら怒っていても音楽をやれば最後は楽しい気分になれるってのは我ながら単純で良い。

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DAY.4 

上の写真はTHE FACES https://www.facebook.com/thefaceschiangmai/という洒落たレストラン。屋内は改装中でガーデン部分のみ営業中だった。同じ敷地内にあるClay Studio Cafeという素敵な庭のあるカフェでやる予定だったが土壇場でうだうだしだしたので交渉して、夜にレストランのこれまた手の込んだ造りのガーデンで弾かせてもらった。チェンマイはブッキングが決まったと思ってもぜんぜん安心できないのである。今回も2箇所続けて時間も内容も変わってしまった。いきなり連絡した俺の話を受けてくれた若いオーナーMigさんの広い心に感謝である。お店の改装が完了したらチェンマイの若いジャズミュージシャンにオファーを出す予定だと言っていた。素晴らしきかな。

演奏は8PMスタートできっかり2時間ノンストップのアンビエント/チルアウトセット。最初はパラパラって感じだったけど途中で満席になった。演奏に引かれて入って来てくれたお客さんも数組いて、俺のところまできて笑顔で親指を立てて『Good!』って感じで帰っていく姿が嬉しい反応だった。昼間電話交渉中に『よくわからないけど君の音は僕の店に合いそうかい?』と聞かれて『絶対に合う。君の店のオリジナルサウンドトラックみたいな演奏をやる。音量もコントロールするから大丈夫だ』という強気のやり取りをしていたし、全くライブ仕様ではない場所でアンプ一発で演奏しているわけで、今までになくものすごく気を使って弾いた。色々な国から観光客が来ていたし、俺の演奏を見に来てくれた人もいた。怖い顔にならないように半眼で口だけ笑って客席を睨みつつ展開を作って必死でギリギリの音量のコントロールをしているうちにこめかみが痛くなってきた(笑)ライブハウスで爆音の演奏をするよりも、実験音楽としてギャラリー等で奇天烈なノイズセットをやるよりも、こっちの方がよっぽど実験的やで…と思った次第。どんな演奏だったかは携帯の充電が切れてて録っていないのでわからないが、まだまだ改良の余地はあるが、確実にやれるってことはわかった。挑戦的で結構面白いし。即興でもアブストラクトでもドローンでもノイズでも、気持ち良ければジャンルは関係ない。良い空間と時間をシェアできればすべてはうまくいくのだ。良い経験だった。オーナーもスタッフも最初はこの日本人は何をやる気なんだろうって顔で不安そうだったが、最終的には雰囲気が良かったので問題なかった。とにかくやらせてもらえて感謝である。次は改装が終わってから正式に頼んでみよう。

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DAY.5 

最終日はSTUDIO THREE。ここでは11時~17時までの時間を使ってソロアンビエントセットとセッション。この前は基本ひとりで弾ききったが、今回はゲストが来てくれていたので空気も変わって単純に助かった。ひとりで6時間はさすがに長い。長すぎると連日の疲れが溜まって来ているので集中力が持たない。

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JIRO OHASHIさんのセットはCDJにミキサーにシンキングボールとドラをたくさん並べた面白いセットだった。静謐なイメージの音響系のセットの最後が『カスバの女藤圭子からの竹内まりあで終了って流れで、シンガポール人の音楽好きの男の子がどういう意図なんだろうって混乱してた(笑)藤圭子ってのは亡くなる前の奇行のイメージが強いけど、ものすごい威力のある声と抜群の歌唱力と世界観を持った天才歌手なので、1曲でそれまでのセットの流れを一発でひっくり返すくらいの威力は確かにあった。正直、作り手としてではなく歌手として比べれば娘より段違いにスゴイと思う。さておき、俺はスタートに90分のソロを1セット。OHASHIさんのソロを挟んでセッション40分。

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最後は60分のソロ。終わった時に5日間の集中が解けて頭から血がサーっと下りていく感じがした。そんなわけで5日間の演奏は終了。

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最後のセット。最終日はFBでライブ中継してみた。音質はともかくこの機能は上手く使うと面白いと思う。最終セットは1曲目に映画音楽の『スパルタカス・愛のテーマ』をゆるゆると弾いて8:50くらいから一気にインプロに突入したが、そこからの方がトラックが整理されている感じがするのはなんで?って感じだった。途中で沖縄っぽいの弾こうと思い立って弾いたのがジッタリン・ジンの懐かしいヒット曲のメロディーだった事に後で気づいて笑った。さておき、今回のツアーは全体的にそんな感じがあって、今までやり慣れたある程度形のある曲よりも、その場の閃きでやってる曲の方が力があった。もちろん即興時にはわけのわからない展開もたくさんあって、それに関してはまだまだ技術的にも音質的にも仕上げられるのは間違いないけど、結局自分の演奏において何が威力のある音でお客さんに届いている音なのかをいろいろな人の前で弾いてよりハッキリと知った感があった。

良く考えたら5本中ライブ的なステージは2本だけで、後はライブ的では無い日常的空間に現れて好き放題弾いているだけである。結局、今回は毒づいていたチェンマイ1夜目のライブも含めてほぼ全部のライブが個人的な実験だったわけだ…と終了後のマキノ夫妻との打ち上げ後の酔っぱらった頭でつらつら思いつつ、『だから儲からねえんだよ』と深く反省したわけである。身を切って行った現場での実験の成果は来週のノイズマーケットでのソロセットで見られるはずである。多分(笑)

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チェンマイで泊まるゲストハウスは毎回良いんだけど、今回も安くて清潔で場所も便利でスタッフが親切で良かった。オーナーのおばちゃんが俺の名前を気に入ったらしく、やたらとコータコータと呼んでは話しかけてくるのが少し面倒だったが…(笑)

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シャンプーを忘れて買うのも面倒で途中から絡んで邪魔になったもんで髪をくくっていた。ギターを担いで降りていくと、宿のおばちゃんが『コータ!そのほうがいい。すっきりして男前に見えるからお金がいっぱい入るぞ!』とすっかり道でギターを弾いていると思われていた俺である。でも実はストリートミュージシャンを生きるための職業としてしっかり認識しているわけでやっぱりタイは素敵な国である。

 

演奏に関する備忘録

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FBで簡単にライブ映像を発信できる機能って便利。日本やタイの友達がバンコクでの演奏をリアルタイムで聞いてくれているのはちょっと嬉しい。現場に来てくれれば尚嬉しいけど音が届けば何でもいいような気もするし。

昨夜はとても人が少なかったけどBARで飲んでいるお客さんはじっくり楽しんでくれていた。実はスピーカーが片方鳴っていなかったりして最初はなんか音がおかしいぞ…?と悩みながら弾いていたが、2nd set で演奏に没入する感覚があった。えてしてそんな時ほど録ってないわけだけど、もうそんなことはどうでもいいや。前回のツアーの演奏を思い出してみると、昨夜の演奏はなんか少し演奏が変わっていた。良い方向に向かっているような気がする。より自由でシンプルな方向に。

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最初の映像のセッションでQuentinと言うベルギー人のフルート奏者と演奏してみて少しコードループを詰めてみる必要があると思った。リード楽器とやる時はメロディーが展開できるように場を整える必要があるからだ。今回はノイズに逃げてゆるやかなセクションを作ったが、美しいコードループがあれば新しい展開が見えただろう。

今夜は時間が短いので展開早めで40分間を一瞬に感じるようなセットを演ってみよう。

CHAOS JAM at Noise Market 7 Climate Change

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Noise Market 7 Climate Change at Musium Siam

2017/11/18, 2017/11/19 Bangkok,Thailand

Event Page   https://www.facebook.com/events/106643090004565/

今月後半はPokさんたちの主催しているマーケットイベントNoise Market 7 に出演。ソロとセッション。Noise MarketでのPokさんの立場はプロデューサーなので忙しくて出演していないときも多いが、今回はサブステージで出演。Stylish Nonsense のふたりと俺のいつもの Chaos Jam TrioにタイのTVスターKeng Tachaya が加わった4人でのセッション。昨年の12×12でのセッションにいきなり現れてそのまま参加した時もビックリしたが、今やBTSの車内CMやビッグビジョンで毎日のように見る顔である。なんで??って感じだけどまぁ面白いので良い。

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Stylish Nonsense+Golf T‐boneって組み合わせもあってこれも面白そうだ。今回はサブステージが完全に趣味に走っている(笑)メインステージはタイの若手インディーバンドがパワフルな演奏を繰り広げるでしょう。雨季も終わったし今回はリラックスして演奏できそうで嬉しい。

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うん、良いメンバーばかりだな。楽しもう。

作品制作に関する備忘録

2017/10/29

崩れてしまったバランスを取り戻すために足掻いている。新機材を導入して新たな形を求めた結果なので仕方のない話だと言い聞かせながら弾いていたが、根本的な部分が揺らいだようでまったく良い音が出なくなった。ここまでイメージのずれを感じたのは久しぶりだし、ツアーも近いので少々焦りだして新しいアプローチを始める前の1カ月ほど前の録音を繰り返し聞いてみた。2夜にわたって過去の自分の演奏を解析してみたが、ルーパーを1台追加してより空間的アプローチをしている合計3時間ほどの録音はとても良い演奏だ。多層構造になっていて立体的だし、長時間の抽象的な演奏だが奔放な構成が気を逸らさないし面白い。迷いが無いってのを差し引いても今とは段違いに良い音。それにしても、考えて弾いている時と無心の時ではまったく別人の音だ。積み上げたものを失くしたのではないかという喪失に対する恐怖感はじわじわ迫って来て動揺を誘うもので、軽いパニックになって昨夜は機材がおかしいのではないかといろいろチェックしたが、結局問題は俺自身だった。機材の操作に捕まっていて肝心の音楽に手が届いていないだけだった。

現状と以前の演奏の一番の違いは、特徴でもある出音の生々しさシンクロしていない複数のループによるでたらめなようでギリギリ成り立っているミニマルグルーブがほぼ消え失せてしまっていることだった。長いループへのアプローチと同時にカバー曲を頭に詰め込む作業を始めたのがかなり影響している。タッチが狂っているのも間違いないが、理由はそれだけでななくて短いループの積み重ねに特化して進化してきた俺独自の曲構築が普通の曲の構成と全く違うにも関わらず、普通の曲を構成するイメージでループを使ってしまっているのがスランプの一番大きな要因のようだ。

しかし、一度頭に入れてしまった異物はもう取り出せない。頭の中にあるすべてのイメージが新たなバランスで再び収まるまで弾きまくるしかないが、果たして間に合うのか…それともツアー中に泥沼に溺れるのか…どちらにしろこの壁を越えればまた新しい世界が待っているのは間違いない。次の曲が生まれるまで録音も中断。トンネルを抜けたら再開だ。

頭を整理するために上記の備忘録を書いてすぐに機材を並べて演奏を始めた。後で修正点を知ろうとレコーダーを回して弾き始めたら1曲目に新しい要素を含んだ10分間のAngel Blue(仮題)という即興曲が録れた。修正せずにそのまま使える無垢なimprovisation。今回の作品の芯にできる曲だと思う。sasiのドゥーアンに詩を書いて読んでもらいたいなという漠然としたイメージがあったけど、この曲がそれになるといいなぁ。ユイ・セロの音も欲しい。ふたりが気に入ってくれることを祈る。最終的にはトミーのリミックスで2ver仕上げたい。

 

2017/10/30

40分間のアブストラクトなサウンドスケープを弾いた。思惑が入り乱れてしまってそのまま使えはしないが悪くない演奏。21分から3分間ほどのギリギリ成り立っているリズムトラックと31分以降の力の抜けたトラックはパーツとして使える。ただ録ったアンプが小さいのですべてリアンプする。長年の積み重ねでアブストラクトパートはどうやっても演奏になるが、いくらでも弾けるからこそ何をもってOKにするかが難しい。どんな場面を表現するのかを演奏前にイメージしなくてはいけない。小さいアンプで録れたトラックのベーシックはすべてリアンプの必要がある。

 

2017/10/31

新機材が突如不調。ライトが付きっぱなしで音が出ない。原因不明。仕方なく旧セッティングでトレーニング。新機材のエフェクトを使った流れができないので手慣れた感じのシンプルなループセットになる。シンプルな分、基になるアイデアがクリアに出るのし、ステージの上で機材的な試行錯誤をしている場合ではないので、ライブにはまだこちらの方が良いかもしれない。ケーブル類をチェックしたら音質にかなりバラつきがあることが判明した。先ずはケーブルを買い換える必要があるようだ。

 

対等であるということ (アムステルダム後記)

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アムステルダム/デンハーグの旅から一年経った。人間関係的にいろいろなことがあって残念ながら結果的には苦い思い出が多くあまり良い旅ではなかった。しかし、時間が経って少し消化されてきたようなので、その時に感じたことを書いてみることにした。

アムスといえばコーヒーショップにレッドライト、平たく言えばマリファナに売春ってイメージを持っていた。歴史あるヨーロッパの国に行くってのにかなり失礼な話である。とはいえ、実際に観光の目玉であるので駅を降りて街に出た瞬間からマリファナの匂いがしていた。自国の法律ではで禁じられていることが合法であるというのはそれだけでカルチャーショックだ。マリファナだけではなくハードドラッグの個人使用に関しても寛容なので、街を歩けばコカイン売りがけっこう大っぴらに声をかけてくる。大きな教会を中心に放射状に広がる飾り窓地帯では大柄なお姉さんたちが昼間っからお客さんを誘っている。なんじゃこりゃ!?って感じだった。

着いて2、3日の間はその非日常的光景を見て歩くことで費やされた。街並みは数百年前から保存された石造りの建物でとても美しいが、システマティックできっちりと管理されている。警官がめちゃ厳しい。ルール違反で物凄い勢いで怒られてる観光客を何度も見た。自由である代わりに全ては自己責任でルールに反するととことん厳しいのだ。2mクラスの巨漢の警官が怒鳴り散らす光景はなかなかの迫力だった。

日が経つにつれ観光地に飽きて周辺のエリアを歩いた。気になったのは観光エリアと通常エリアの明らかな温度差。住民はいたって真面目に整然と美しい街の中で日常を過ごしていて、乱痴気騒ぎをしているのは観光客ばかり。禁じられるからこそやりたくなるってのはほんまやねんな…と。一緒に行った友人は『成熟している』と表現してたけど、俺も同じようなことを感じた。過剰に保護されなくても人はそれぞれが正しいと思う道を進むのだ。破滅を選ぶのも自由。大人だ。

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初めてヨーロッパに行ったので感じることはいろいろあったが、今になって良く思い出すのは、カフェで注文をするときに女性の店員さんにたしなめられたことだ。この出来事が一番印象に残っているし、日本人独特の長年の間違えた考えを正してもらったような気がしている。

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俺はカフェに入ってカウンターで注文をした。

『アメリカンをひとつ』

すると黒人の若い女性店員が腰に手を当ててあきれたような顔で言った。

『こんにちわミスター。まずはあいさつでしょ。私は機械じゃないわよ』

『ああ!すまない。こんにちわ』

すると彼女は笑顔になって

『こんにちわ。アメリカンね。あなた日本人?』

『そうだよ』

『楽しんでる?ちょっと待っててね。すぐ作るわ』

会話の内容はこれだけだ。でもずっと憶えている。サービスを受けるのが当たり前だと思っているので初対面の人に対して目を合わさず挨拶もしない。ひじょうに傲慢な態度であるし、そのことに気づいてすらいなかったことがとても恥ずかしかった。

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そんなわけで、この出来事だけでも俺にとっては行った意味があったなぁと今は感じている。シンプルに挨拶ってのはだいじなもんだと今さら知ったわけである。

 

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俺のやっている音楽は少し変わっているので少々変わった若い連中に良く会う。彼等は基本的に変わり者で内向的で愛想が悪い(笑)なんだかんだ話していて何かアドバイスを求められると最近は決まってこう言う。

『ステージに出て行ったら演奏を始める前に無言でもいいから一礼するんだ。音楽について言うことは何もない。オリジナルは好きにやるのが一番だし君のやりたいことは君以外の誰にもわからない。そして、演奏が終わったら最後にもう一度礼をするんだ。それだけで反応が少し変わる。お客さんと時間をシェアするんだ』

以前から言っていたし実践していたことだけど、本当の意味で理解したのはアムステルダムで出会った俺よりだいぶ若い女の子のおかげである。少しはマシになったと思っていたがまだまだダメ人間である。日々精進。