An "I " Novel from The City Of Angels

Diary 『バンコク在住日本人ギタリストの日記』

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月曜の昼間にFBに知らない男性から至急連絡を取りたいというメッセージが入っていた。FBでしか会ったことが無くて先週金曜日にバンコクで初めて実際に会った女性の甥っ子さんだった。唐突な連絡と早急に連絡を取りたいという内容に『何かがあったんだな…』と思って返信をすると、その女性がホテルの部屋で倒れて亡くなっていたという報せだった。 

甥っ子さんはバンコクで俺に会うということだけを聞いていたらしくて、バンコクでの彼女の様子を知りたいようだった。俺は驚いてしばらく固まってしまった。彼女はとても元気で話も弾んだので2日目の夜も部屋で下の映像のギターを弾いていたら連絡があって、アパートの屋上に酒を持って来た彼女と2時間ほど一緒に飲んだのだ。東京でファッション関係の仕事をしているという彼女は、アートエキシビジョンのオーガナイズもしていて下見もかねているようで忙しそうではあったが、1週間もたたないうちに亡くなる予兆は全く感じられなかった。 

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今回会ったばかりで2晩だけ一緒に飲んだだけだったので、俺が甥っ子さんに与えられる情報はほとんどなかったが、バンコクでの彼女の動きをできる限り調べてメッセージを送った。俺の案内したGalleryやマーケットにも行っていたようで、会っていない日もメッセージのやり取りはしていたからだ。何日に亡くなったのかはハッキリしていないが、先週の金曜日までは人と会っていたことがわかった。ただ、わかったのはそれだけだ。まだ死因も何もわかっていない。 

今日家族がバンコクに着いたはずだが、何か手伝えることがあればやるつもりだが、先週会ったばかりで状況のわかっていない俺にできることはほとんどないだろう。俺は突然のことにいろいろ考え込んで沈んでしまった。朝から間違った駅で降りてしまったりしてなかなか動揺していた。異国での突然の死を彼女はわかっているのかな…とか、自分に置き換えたりして命の儚さや自分の存在の曖昧さについて考え込んで疲れてしまったのでいつものようにギターを持ち出して弾き始めた。 

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最初は気を紛らわそうと抽象的なノイズを弾き始めたが、途中から彼女の死についてまた
考えながら弾いていて、心模様がもろに音に出てしまってとても美しくとても悲しい音になった。後で聞き直してみるとノイズから静かな追悼の音に代わって最後の3分間ほど、録音がバチバチ切れてすごく荒れていた。そんなことは今までに一度もなかった。彼女が来ていたのかな…と思うとまた悲しくなった。人生はある日突然終わってしまうこともあるのだ。瞬間を生きなくてはいけないなと思った。