An "I " Novel from The City Of Angels

Diary 『バンコク在住日本人ギタリストの日記』

Trip In Chiang Mai 後記(少々毒入り)

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TOUR  DAY.3  Thapae East - venue for creative art-

もう3回目の出演になるThapae East - venue for creative art- にてソロかと思いきや数日前に突然パーティーに変わった。もう通いなれた感じもあるので何の問題もなくゲストハウスについてチェックインして荷物を整理して会場へ。

会場は既に準備が整っていてフードコーナーが設営されていてフリーフードにフリードリンクが振舞われていた。幟まで立っていてそこにはTED CHIANGMAIの文字が…あれ??ライブイベントじゃないのね…と思いつつパーティーは始まったわけだが、やはりなんか雰囲気が違う。どう見ても音楽のイベントじゃないなこれ…どないやねん?と始まった2組の地元ミュージシャンも少し散漫な演奏。まあいいや。俺はいつものようにしっかりやろう、とセッティングを終えて演奏を開始しようとすると外でマイクで喋るから少し待っててねと言われて待機…しようと思ったがなかなか始まらないし目の前には結構な数の若いお客さんが演奏を待っていてくれてけっこう集中しているし、時間も既に少し押している…と思ったら手が動いて勝手に弾き始めていた。最初の5分間でみんなが身を乗り出す感じが伝わって来た。『よし。いい感じで掴んだぞ。いける』と思ったら外から入って来たオーナーに演奏止められた。そこから30分以上店の外でああだこうだと地元の名士やファランの商店主達のご挨拶。その間ひたすら待たされる俺と会場内の音楽を聞きに来てくれた若いお客さん達。外と内でお客さんの目的と年齢層が完全に分離していた。プラスティック製品を使わないようにしましょう!ってのは良いお話だけど正直邪魔だし商売っ気が強すぎて嘘臭い。タイに来てから適当なのと金持ちの偽善臭さにはだいぶ慣れたけど、1カ月前からこの日にライブブッキングしていたわけだし、後から乗って来て好き勝手するのやめてくれんかなおっさん…とさすがにイラつく俺。見てくれていたチェンマイの女の子が送ってくれた下の写真でも顔の端々に微妙に怒っている感じが…(笑)

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軽く30分以上は経って俺の演奏予定時間が終わった頃に『さあ張り切ってどうぞ!』って言われたけど、カバーやコピーちゃうし一度無理に断ち切られた集中力とか道すがら作ってきた1時間セットの構成のイメージも壊されてしまったし、もう一度弾きながら並行して組みなおすのが大変やっちゅうねん。ああ、もちろんやるよ。見に来てくれてるし。でも俺は『タダ酒飲んで小屋にも入らずに自慢大会してるお前等の為に弾いてるんちゃうんやで~目の前の若い音楽好きの為に弾くんやで~俺はお前らに今回一緒にやりたいとは一言も頼んでへんし、ノイズセットやって今回も警察呼んだろかこの礼儀知らずの田舎者ジジイ共が…』と黒い怒りが荒れ狂う心中を抑え込んで再度ご挨拶して『じゃあ、もう一回集中して音楽を』と、演説中にじっと演奏の再開を待っていてくれた皆さんへのMCと共に演奏開始。

まあなんとか怒りを演奏に出さずにやり切った…はずだ…多分。部屋の中は満員でしっかり聞いてくれたので良かったが、最初に切られたセットの導入部がとても美しかったのでその続きのセットは幻になってしまったわけで残念だった。マネージメント無しで全ての場を整えるってのは本当に難しいと痛感したステージだった。とりあえず近所の集会なのかライブをやるのか目的ははっきりしたほうが良い。付け合わせに使われるのはほんまに好かん。だいたいプラスティックストローより前に解決すべきことがこの国には山のようにあるだろう。結局プラスティック製品の代替品を売りたいだけの偽善者ばかりだった。薄っぺらくて反吐が出るぜ。最後にサックスバンドがセッションしていたのでいきなりラストに直でアンプに突っ込んで乱入(笑)『やっほ~い!』って感じで弾いて明るく終了。いくら怒っていても音楽をやれば最後は楽しい気分になれるってのは我ながら単純で良い。

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DAY.4 

上の写真はTHE FACES https://www.facebook.com/thefaceschiangmai/という洒落たレストラン。屋内は改装中でガーデン部分のみ営業中だった。同じ敷地内にあるClay Studio Cafeという素敵な庭のあるカフェでやる予定だったが土壇場でうだうだしだしたので交渉して、夜にレストランのこれまた手の込んだ造りのガーデンで弾かせてもらった。チェンマイはブッキングが決まったと思ってもぜんぜん安心できないのである。今回も2箇所続けて時間も内容も変わってしまった。いきなり連絡した俺の話を受けてくれた若いオーナーMigさんの広い心に感謝である。お店の改装が完了したらチェンマイの若いジャズミュージシャンにオファーを出す予定だと言っていた。素晴らしきかな。

演奏は8PMスタートできっかり2時間ノンストップのアンビエント/チルアウトセット。最初はパラパラって感じだったけど途中で満席になった。演奏に引かれて入って来てくれたお客さんも数組いて、俺のところまできて笑顔で親指を立てて『Good!』って感じで帰っていく姿が嬉しい反応だった。昼間電話交渉中に『よくわからないけど君の音は僕の店に合いそうかい?』と聞かれて『絶対に合う。君の店のオリジナルサウンドトラックみたいな演奏をやる。音量もコントロールするから大丈夫だ』という強気のやり取りをしていたし、全くライブ仕様ではない場所でアンプ一発で演奏しているわけで、今までになくものすごく気を使って弾いた。色々な国から観光客が来ていたし、俺の演奏を見に来てくれた人もいた。怖い顔にならないように半眼で口だけ笑って客席を睨みつつ展開を作って必死でギリギリの音量のコントロールをしているうちにこめかみが痛くなってきた(笑)ライブハウスで爆音の演奏をするよりも、実験音楽としてギャラリー等で奇天烈なノイズセットをやるよりも、こっちの方がよっぽど実験的やで…と思った次第。どんな演奏だったかは携帯の充電が切れてて録っていないのでわからないが、まだまだ改良の余地はあるが、確実にやれるってことはわかった。挑戦的で結構面白いし。即興でもアブストラクトでもドローンでもノイズでも、気持ち良ければジャンルは関係ない。良い空間と時間をシェアできればすべてはうまくいくのだ。良い経験だった。オーナーもスタッフも最初はこの日本人は何をやる気なんだろうって顔で不安そうだったが、最終的には雰囲気が良かったので問題なかった。とにかくやらせてもらえて感謝である。次は改装が終わってから正式に頼んでみよう。

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DAY.5 

最終日はSTUDIO THREE。ここでは11時~17時までの時間を使ってソロアンビエントセットとセッション。この前は基本ひとりで弾ききったが、今回はゲストが来てくれていたので空気も変わって単純に助かった。ひとりで6時間はさすがに長い。長すぎると連日の疲れが溜まって来ているので集中力が持たない。

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JIRO OHASHIさんのセットはCDJにミキサーにシンキングボールとドラをたくさん並べた面白いセットだった。静謐なイメージの音響系のセットの最後が『カスバの女藤圭子からの竹内まりあで終了って流れで、シンガポール人の音楽好きの男の子がどういう意図なんだろうって混乱してた(笑)藤圭子ってのは亡くなる前の奇行のイメージが強いけど、ものすごい威力のある声と抜群の歌唱力と世界観を持った天才歌手なので、1曲でそれまでのセットの流れを一発でひっくり返すくらいの威力は確かにあった。正直、作り手としてではなく歌手として比べれば娘より段違いにスゴイと思う。さておき、俺はスタートに90分のソロを1セット。OHASHIさんのソロを挟んでセッション40分。

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最後は60分のソロ。終わった時に5日間の集中が解けて頭から血がサーっと下りていく感じがした。そんなわけで5日間の演奏は終了。

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最後のセット。最終日はFBでライブ中継してみた。音質はともかくこの機能は上手く使うと面白いと思う。最終セットは1曲目に映画音楽の『スパルタカス・愛のテーマ』をゆるゆると弾いて8:50くらいから一気にインプロに突入したが、そこからの方がトラックが整理されている感じがするのはなんで?って感じだった。途中で沖縄っぽいの弾こうと思い立って弾いたのがジッタリン・ジンの懐かしいヒット曲のメロディーだった事に後で気づいて笑った。さておき、今回のツアーは全体的にそんな感じがあって、今までやり慣れたある程度形のある曲よりも、その場の閃きでやってる曲の方が力があった。もちろん即興時にはわけのわからない展開もたくさんあって、それに関してはまだまだ技術的にも音質的にも仕上げられるのは間違いないけど、結局自分の演奏において何が威力のある音でお客さんに届いている音なのかをいろいろな人の前で弾いてよりハッキリと知った感があった。

良く考えたら5本中ライブ的なステージは2本だけで、後はライブ的では無い日常的空間に現れて好き放題弾いているだけである。結局、今回は毒づいていたチェンマイ1夜目のライブも含めてほぼ全部のライブが個人的な実験だったわけだ…と終了後のマキノ夫妻との打ち上げ後の酔っぱらった頭でつらつら思いつつ、『だから儲からねえんだよ』と深く反省したわけである。身を切って行った現場での実験の成果は来週のノイズマーケットでのソロセットで見られるはずである。多分(笑)

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チェンマイで泊まるゲストハウスは毎回良いんだけど、今回も安くて清潔で場所も便利でスタッフが親切で良かった。オーナーのおばちゃんが俺の名前を気に入ったらしく、やたらとコータコータと呼んでは話しかけてくるのが少し面倒だったが…(笑)

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シャンプーを忘れて買うのも面倒で途中から絡んで邪魔になったもんで髪をくくっていた。ギターを担いで降りていくと、宿のおばちゃんが『コータ!そのほうがいい。すっきりして男前に見えるからお金がいっぱい入るぞ!』とすっかり道でギターを弾いていると思われていた俺である。でも実はストリートミュージシャンを生きるための職業としてしっかり認識しているわけでやっぱりタイは素敵な国である。