An "I " Novel from The City Of Angels

Diary 『バンコク在住日本人ギタリストの日記』

情報過多は想像力を殺す

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これから書くのはあくまで個人的な感想やけど、ケミカルブラザース、アンダーワールド、ファットボーイスリム、レディオヘッドビョーク等々の90年代のビッグアーティストが2017年現在も相変わらずロックフェスのヘッドラインってのは違和感がある。時の流れが止まってしまっているみたいだ。俺は世代的にもちろん大好きだけど、もう2017年だ。閉塞感が強すぎて俺の好きなスタイルの音楽の時代は終焉を迎えるのだろうと思うと悲しくなる。もう既に終わってるのかもしれんけど、好きなので生きてるうちは希望を持ちたいもんである。だがしかし、そう遠くないうちにPC MUSICに負けて絶滅してロックはサンプリングネタとしてパーツの一部としてだけ扱われるようになるんだろう。ディストーションギターリフの前時代な空気感が欲しいよね…的な使われ方だ。何もかも薄く軽くなっていく。カート・コバーンの死後、心を揺さぶられたロックスターは皆無だ。もちろん素晴らしい作品にはたくさん出会ったけど、心を撃ち抜かれるような存在は出現していない。

個人的にはロックバンドは2000年以降ほぼ進化していないと思っている。細分化が進んでより音楽的により繊細により先鋭的になったが、ロックンロールがダンスミュージックであった頃に多種多様な観客を魅了していた『強大なエゴが放出するでたらめなエネルギー』を失くしてしまった。初期衝動を失くして頭で考えて作る音楽になってしまった時点でロックは存在意義があやふやになってしまった。結果、中途半端でうるさい音楽よりも観客に快楽を与えることに特化したダンスミュージックが世の中のメインになっていったってのは納得できる結果だ。コアを失くした音楽は美味しい部分だけを商業音楽に吸収されて消えていく。機材の進化とネットでの情報共有でアンダーグラウンドミュージシャンの裾野が広がった結果、ハードコアな次代の音楽を生み出すはずのアンダーグラウンドシーンまで存在意義が曖昧になって衰退しているように見える。例えば日本のノイズシーンは未だに俺の上の世代がイベントのメインを張っている。要するにおっさんばっかりだ。おっさんの方が今の子供より野放しで育ってきているので現代の若者よりエゴが強いんだろう。楽器弾きは先人の作った膨大なフォーマットを学んでそれを消化して演奏して生活の糧を得るだけで精一杯だ。技術があるのに自分の音楽のイメージを持つ余裕がないしそれを生み出す時間もない。情報過多は想像力を殺す。結果、同じようなフォーマットの同じような音楽が作られる。クリエーターは鈍感で自信過剰な阿呆の方が良い部分もあると思う。

俺の人生を変えたパンクに至っては最早ファッション用語的な意味合いで使われている事の方が多い。悲しいが突出した個性は子供の時点で矯正もしくは排除されてしまう昨今、パンクスという種族が存在すること自体が難しいんだろう。とりあえず懐メロでもいいから長生きしてくれ Iggy。最初にライブ映像でIggy Popを見た時の衝撃、パンク専門のレコード屋でチン〇丸出しで歌っているレコードジャケットを見つけた時の驚きは一生忘れられないだろう。まだ世間知らずだった俺は、『こんなんしてええんや!!すげえ!!』と思って人生を踏み外したわけだが、まだ後悔はしていない(笑)

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フリーの即興ジャムセッションの時に良くある会話。

『何をしたらいいですか?』

『フリーだから何をしてもいいよ。ルール無し。やりたいようにやって』

『え!無理です!何をやったらいいか指示してください』

『指示したらフリーじゃないじゃん。じゃあ、誰の音もフォローしなくていいので、まず自分の一番得意なことをやって、その後は気分次第で』

『それじゃ演奏が合わなくないですか?』

『合わせなくていいんだよ。みんな好き放題やってりゃそのうち合う時が来るから。もし合えばその時は今まで聞いたことのないバランスの新しい音楽になる。ただ、やるからには思い切りやってね。じゃないと悩んだ音になって見てる人が退屈するから』

『思い切り好きにやる… 私にできるでしょうか?』

『人それぞれやからやってみないとわからないね。極端な話をすると、何も出てこなけりゃ弾かなくてもいいよ。カウンターで演奏見ながら酒飲んでてもかまわない』

『はい … あぁぁできるかなぁ(頭を抱える)』

同じような会話を繰り返しつつ、来る前に心構えだけでもきっちり作ってきて欲しいなと毎回思う。ステージで悩むくらいなら断ればいいのだ。だいたいは向こうから参加したいと言ってくるんだし、最低限のコンディションは作って来るべきじゃないかな。スポーツ選手が試合前にトレーニングをするのと一緒だ。臨機応変に動けないと試合にならないわけだし。

フリーはフリー。曲は曲。アプローチが180度違う。セッションの後で興奮できた奴は自分の中になにか表現したいことを持っている奴だ。そうでない奴は曲をしっかり演奏するのが良い。フリーのセッションができなくても生きていくのに何も問題はないし、何事も中途半端が一番よろしくない。

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最近リッチなタイ人の趣味としてジャズやロックの名盤をレコードで収集することが流行っている。 SNSにコミュニティーもできていて、日々名盤レコードがアップされている。庶民には手の届かない値段の楽器もけっこう売れているそうだ。その割にはNU-JAZZとかNu-Soul的なバンドはまだ見たことがない。音楽大学を出ているジャズの基礎を勉強したリッチな若手ミュージシャンは多いし、若い連中はオシャレさんが多いわけだし、服装もばっちり決めてタイ語でオリジナル作って演れば良いのに…と思う今日この頃だが、総じてこの街ではFUNKやSOULといったブラックミュージックを聞く機会が少ない。理由はわからない。

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