An "I " Novel from The City Of Angels

Diary 『バンコク在住日本人ギタリストの日記』

Wanderer

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月日は百代の過客にして、行き交ふ年もまた旅人なり。船の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老いを迎ふる者は、日々旅にして旅を栖(すみか)とす。古人も多く旅に死せるあり…懐かしいなこの一節。メーナムの船上で働く人達に俺が抱く憧れみたいな気持ちの根幹はこんな感じなんだろう。

バンコクにはたくさんのエリアがあって、POPS中心の店が多いとはいえ演奏できる場所も地方の街より断然多い。ただ、やはり時間の経過と共に行動パターンは決まって来てしまうわけで、どうしても視野が狭くなる。ひとところにいるだけでは得られない感覚と言うのは間違いなくあって、それは旅に出て新たな人と出会うことでしか得られない。そんなわけでどこかに行きたくなるのだ。今まさにじんわりと『行かなくては』というぼんやりした焦燥感に駆られている。

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同じエリアでの決まった行動パターンの中で固定し始めたイメージを打破する為の方法があるなら何でもよいわけだが、心の持ちようだけでモチベーションをコントロールするのはとても難しいので状況を変えてしまうのが一番手っ取り早い。焦ってもしょうがないが、自分なりに即興演奏を進化させていくためには俺の全く知らない場所で音でコミュニケーションを取る為に必死で足掻くことが一番良いってのはタイでの活動で既に証明されているので、周辺国へのツアーをきっちり組む為の地道な仕込みを始めなくてはいけない。日々に追われているだけでは止まってしまう。

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Turn on, tune in, drop out

この有名な一節の drop out という部分は自立するという意味なんだけど、LSDというドラッグのイメージが強すぎて別の意味合いで捉えられている。内容を踏まえるとindependentって言葉の意味と近いと思うが、こと音楽に関していえばこの言葉もジャンルを括る為の言葉になっているので、本来の独立や独自性を表す言葉とは逆の意味合いになってしまっていて言葉を正しく理解するってのは難しいなぁと思う。でも気になった日本語について英語を調べてみるだけでいろいろ発見があって興味深い。調べるほどに混乱してどの言葉を使えば良いのかわからなくなっている気もするが、思いを巡らせるってのはそれだけで楽しい。

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Derek Bailey の即興演奏。音楽的な部分のあれこれは俺には関係ないのでさておき、独自性においては疑う余地もない。表現のコアにある揺ぎ無い強靭な意志こそが人の心を動かしている。そんなことを考えていたらCHAOS JAMの次のセッションの企画が入って来た。コアなセッションを常に特別な場にするために、それを維持するために、個人が進化し続けていかなくてはいけない。偉大な先人の意志を見習いつつ俺も気持ちを締めなおして今日も己の音楽を追いかけてこよう。