An "I " Novel from The City Of Angels

Diary 『バンコク在住日本人ギタリストの日記』

作品制作に関する備忘録

2017/10/29

崩れてしまったバランスを取り戻すために足掻いている。新機材を導入して新たな形を求めた結果なので仕方のない話だと言い聞かせながら弾いていたが、根本的な部分が揺らいだようでまったく良い音が出なくなった。ここまでイメージのずれを感じたのは久しぶりだし、ツアーも近いので少々焦りだして新しいアプローチを始める前の1カ月ほど前の録音を繰り返し聞いてみた。2夜にわたって過去の自分の演奏を解析してみたが、ルーパーを1台追加してより空間的アプローチをしている合計3時間ほどの録音はとても良い演奏だ。多層構造になっていて立体的だし、長時間の抽象的な演奏だが奔放な構成が気を逸らさないし面白い。迷いが無いってのを差し引いても今とは段違いに良い音。それにしても、考えて弾いている時と無心の時ではまったく別人の音だ。積み上げたものを失くしたのではないかという喪失に対する恐怖感はじわじわ迫って来て動揺を誘うもので、軽いパニックになって昨夜は機材がおかしいのではないかといろいろチェックしたが、結局問題は俺自身だった。機材の操作に捕まっていて肝心の音楽に手が届いていないだけだった。

現状と以前の演奏の一番の違いは、特徴でもある出音の生々しさシンクロしていない複数のループによるでたらめなようでギリギリ成り立っているミニマルグルーブがほぼ消え失せてしまっていることだった。長いループへのアプローチと同時にカバー曲を頭に詰め込む作業を始めたのがかなり影響している。タッチが狂っているのも間違いないが、理由はそれだけでななくて短いループの積み重ねに特化して進化してきた俺独自の曲構築が普通の曲の構成と全く違うにも関わらず、普通の曲を構成するイメージでループを使ってしまっているのがスランプの一番大きな要因のようだ。

しかし、一度頭に入れてしまった異物はもう取り出せない。頭の中にあるすべてのイメージが新たなバランスで再び収まるまで弾きまくるしかないが、果たして間に合うのか…それともツアー中に泥沼に溺れるのか…どちらにしろこの壁を越えればまた新しい世界が待っているのは間違いない。次の曲が生まれるまで録音も中断。トンネルを抜けたら再開だ。

頭を整理するために上記の備忘録を書いてすぐに機材を並べて演奏を始めた。後で修正点を知ろうとレコーダーを回して弾き始めたら1曲目に新しい要素を含んだ10分間のAngel Blue(仮題)という即興曲が録れた。修正せずにそのまま使える無垢なimprovisation。今回の作品の芯にできる曲だと思う。sasiのドゥーアンに詩を書いて読んでもらいたいなという漠然としたイメージがあったけど、この曲がそれになるといいなぁ。ユイ・セロの音も欲しい。ふたりが気に入ってくれることを祈る。最終的にはトミーのリミックスで2ver仕上げたい。

 

2017/10/30

40分間のアブストラクトなサウンドスケープを弾いた。思惑が入り乱れてしまってそのまま使えはしないが悪くない演奏。21分から3分間ほどのギリギリ成り立っているリズムトラックと31分以降の力の抜けたトラックはパーツとして使える。ただ録ったアンプが小さいのですべてリアンプする。長年の積み重ねでアブストラクトパートはどうやっても演奏になるが、いくらでも弾けるからこそ何をもってOKにするかが難しい。どんな場面を表現するのかを演奏前にイメージしなくてはいけない。小さいアンプで録れたトラックのベーシックはすべてリアンプの必要がある。

 

2017/10/31

新機材が突如不調。ライトが付きっぱなしで音が出ない。原因不明。仕方なく旧セッティングでトレーニング。新機材のエフェクトを使った流れができないので手慣れた感じのシンプルなループセットになる。シンプルな分、基になるアイデアがクリアに出るのし、ステージの上で機材的な試行錯誤をしている場合ではないので、ライブにはまだこちらの方が良いかもしれない。ケーブル類をチェックしたら音質にかなりバラつきがあることが判明した。先ずはケーブルを買い換える必要があるようだ。