An "I " Novel from The City Of Angels

Diary 『バンコク在住日本人ギタリストの日記』

SUKHUM MUSIC FESTIVAL

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3年以上前に一時帰国した日本からタイに戻った時に初参加したライブシリーズ Come pn is such a joy スクンビットエリアでフェスを開催する。フェスのメインゲストは日本のサイケレジェンド ACID MOTHER TEMPLE他にも日本人のゲストが数組とヨーロッパ、近隣国のアンダーグラウンド/エクスペリメンタル系アーティストも参加する。バンコクで一番ラグジュアリーなエリアでゴリゴリのアンダーグラウンドミュージックのフェスをやってしまう主催者Pokのハードコアな感性と彼のキャラクターを愛する皆さんの空気を読まないコラボレーション企画。なんと素晴らしい。俺はGOLFさんとドラマーとのバンド体制で出演する予定だが決まりごとは無いのでセッションメンバーは増えるかもしれないしふたりきりかもしれない。まあどないでもなる。

Nakarin Teerapenun × Kota Takif:id:amatutitaki:20180507194655j:plain

Nakarin Teerapenun × Kota Taki

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GOLFさんはハイシーズンに向かって彼のメインバンドであるビッグバンドT-BONEのライブが増えてきているのとトリオのフリージャズユニットで忙しい。俺は俺でソロのツアーやら録音やらでバタついているので打ち合わせはないだろう。もうセッションの回数も重なってきたが、彼がこのユニットに望んでいるものを表現するには手合わせがまったく無いくらいがちょうど良いのではないかと思っている。長らくユニット名が無いし思い付きでDIS-COMMUNICATIONSって名前にしようかな…と軽く検索したら、この言葉って和製英語なんだな…ぜんぜん知らなかった。

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T-BONEのフロントマンのGAPIさんは今年の朝霧ジャムやらZETTAIMUに出演している。ふたりともがソロワークも成功していてスゴイ兄弟だよなぁ。

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いろいろあるが、俺は変わらずひとり無人の荒野を行くがごとく愚直に先の見えない歩みを続けるわけである。タイの友人達のおかげでたま~に華やかな場にも出られるようになってきたが、ソロに関しては一般的なミュージシャンとは根本的に違うことを目指しているようなので、自分で試行錯誤しながら演奏する場所をさがして、誰かに呼ばれたらどこにでも行くって感じで、あくまでもメインのステージはひとりで立つ小さなステージになっていくだろう。会場にいる全員に気が届く小さな空間だ。思い描いている境地にたどり着くまではこのままサバイバルを続けよう…と、昨日お参りに行ったお寺の本堂で夕方の勤行の声を聞きながら決意を新たにした。

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そんなわけで今日も一日中脳内の迷宮を彷徨う俺である。皆様良い週末を。

 

10月の徒然

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明日はオカンの命日なので仕事終わりでお寺に行く。家族とぜんぜん連絡を取らない浮浪雲なのにこの日だけはずっと忘れずに毎年こんなことを書いているのが不思議だ。

今日はヒルの仕事終わりで録音の打ち合わせの為にBrownstone Studioに行ってTommyとミーティングをして帰って来た。もともとは録音の予定だったが、昨日ディレクターに送った5つの新しいトラックの評判が良くて、どうするか悩んでるからもう少し時間をくれってことで、クリアになるまで無駄な作業をするよりは寝ようってことで打ち合わせのみ(笑)まだまだ若くてイケイケなTommyの日々スケジュールは俺の比ではなくてマジでそのうち死ぬで…って感じなのだ。早く寝ろよと言いながらなんだかんだ話しているうちに2時間ほど過ぎて雨が降りだしたので慌ててバイクに飛び乗って帰った。

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BTSでトンローに向かっていたらこの前のパーティーで会ったポーランド人の美人さんから『ありがとう!この前の演奏は本当に感動した。私は生きてるって思ったし心に何か伝わって来た!!』って最上級の感謝のメッセージが届いて、電車の中でとても幸せな気分になった。こちらの方が感謝しかない。初めて会った誰かに、自分の弾いた音だけで何かが伝わるってのは本当にうれしいもんだ。昨夜会ったパーティーの主催者のTaksinaからも『パーティーで演奏してもらえて私たちはラッキーだった。KOTAの音楽で私の友達が5人も泣いてたわ』と言われて、褒められ慣れていない俺はめちゃめちゃ嬉しいのに返事に窮して当たり前の言葉しか返せなかった。遺憾よな。

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昨夜送った5曲のトラックにしても、この前のパーティーの演奏にしても、俺の感覚はぜんぜん世間とずれているんだなぁと思ったのは、パーティーだからと脱力して演奏した方が伝わって皆が感動していたり、これはいけるだろう!と思ったトラックはダメでこれは好きにやり過ぎたからボツだろうな…と思っていたトラックに『一番好きなのはこれ!最高!!』ってディレクターのコメントがついてたりしてわけがわからん。色々な場面で同じようなことが頻発するのでこれからどうしていったらよいのかわからなくなりつつある。俺はひたすら演奏して曲を作って、判断は誰かに任せた方が良いんだろうな。マネージャーってほんまに大事やわ。

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とりあえず俺は気合を入れるとすべるみたいなので、常に脱力を心掛けて今回のツアーはいってみようと思う。何も考えずに没入する方が良いのかもしれん。

 

 

Whimsical後記

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昨夜は雨が降っていたけどフリーダムな空気のある良いパーティーだった。お客さんの年齢も様々で妙に居心地が良くて、DJ ANDREA というDJのプレイ、特にキックの音の作り方がツボだった。

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俺は最近のセットと同様にスマホのノイズをMIXしていたので録音はできなかったが、終わった時の拍手に熱が合ったのでけっこうええ感じのセットだった。パーティーのお客さんの中には以前に別のパーティーで演奏を見たというお客さんも何人かいて、終わった後で話をしに来てくれた。混沌としたパーティーの最中に初めて見たエンターテインメント要素皆無のミュージシャンの音を憶えてくれているというのは嬉しい話だ。今度からはWebで上がるライブの宣伝を気にしてみてくれるだろうし地道だけど弾き続けるってのは大事だな~。

途中でだいぶ酔っぱらった状態で近くに飯を食いに出たら先輩に会って珍しくめっちゃ喋った。ひとりでしっぽり日本酒を飲んでいたところに乱入してワーワー言ってたので先輩はだいぶ面倒くさかったはず(笑)

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そんなこんなでしっかり最後まで楽しんで帰ってからも飲んで最終目が回って寝た。アホや。けどたまにはいいかな。最近あんまり酔っぱらってなかったし楽しい夜だった。ツアーが近づいてきた。昨夜の演奏の感触だと調子も悪くない。あとは集中力と体力のみ。気合入れて整えよう。

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【10/1 追記】

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スマホ使ってるしレコーダーねえし今夜も録れないな…と諦めていたが、DJ達が録音してくれていた。須磨に住んでいる時にできた【凪】って曲とか最初の即興作品に入っている【ハレノヒ】とかTrip In Summerに入っている【夢の跡】もやってるし、ここ2年くらい弾き続けている題名の付いていない曲に虫の声や水音にクジラの歌声もミックスしてつなぐところは即興で作っていて初期のamatuti dub drawing spaceのアップデート2018年版って感じで好きだ。ただ、タッチミスがめちゃめちゃ多い。相変わらずギター弾くの下手くそだわ。脳みそにプラグ直結で音が出りゃいいのに。ただ、セットの構成はけっこう良い。緩い音のままで普通のお客さんをロックしていた。調子は悪くない。タッチに関しては日々のトレーニングが足りていないだけだな…ってそれぜんぜんあかんがな。

今回はパーティーだったし女性が多かったので封印したダークノイズ/トリップホップ/エクスぺリメンタル&パンク成分を足してボコーダーで歌って歪み系の機材をもっと整備して高音質の90分セットができたらパーフェクト!!…ってまだまだやらなあかんことが多いなぁ…まだ歌は無理だし。まあ地道にいきましょう。

KOTA TAKI Improv solo tour - Chiangrai to Chiangmai -

今日サンプラーが2台戻って来たので機材は現状ではパーフェクト。ここから2週間でコンディション上げてツアーでは即興要素を増やせば久しぶりに新曲が降りてくるかも。

 

Peaceful Laboratory Experiment

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チェンマイのホテルはブッキングしたがチェンライが初めてで土地勘ゼロなのとやたら広いのでどこが良いのか全くわからない。おまけにレコーディングに使うスタジオは郊外にあるらしくてどうしたもんやら相談しつつもう一件振っているライブの返事を待っているわけだが、決まっているライブのフライヤーが上がって来た。コンサート告知っぽい真面目でしっかりしたデザイン。あとは演奏の準備を整えて人が集まってくれることを祈るしかない。知名度が無いので現地に行ってその場に立ってみないと何もわからない。このイベントは会場がギャラリーで酒場ではないので純粋に演奏を見に来る人しか集まらないし、チェンマイもそうだが地方都市の夜は早く観光客は多いが現地人は少ない。商売人が多いので集まるのは2時間程度で一気に終了する。人づてや物珍しさでやって来る様々な年代の様々なみなさんに知っている曲や耳馴染みのある音楽を1曲もやらず言葉も使わずに1時間集中してもらって何かを伝えられるか…というのが長年続けている俺の挑戦だ。飽きさせたら一気に崩れ去るし、かといって音の大きさや奇をてらったパフォーマンスではたかが数分しか持たないので、じっくり話を聞いてもらうような演奏になる。ずっと追いかけてきたのはこの状況を突破できる音楽なので、今回の状況は個人的にやりがいがあってとても嬉しい。

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バンコクでは実験的ミュージシャンのような扱いをされることが多いので、必然的に《エクスペリメンタルミュージックが好きな人にエクスペリメンタルミュージックの演奏を見せる》ということになりがちだが、これは《アイドル好きにアイドル》《レゲエ好きにレゲエ》《馬に人参》《猫にまたたび》《おっさんにゴーゴーバー》的な当たり前のエンターテインメントの構図で実験的とは言い難い。音楽を愛している人ほどきっちりとターゲットに狙いを定めたオーガナイズをするもので、それはもちろんとてもありがたいことなんだけど、宣伝段階で来る人ががっちり選別されているわけで、たまに何かが足りていないような気分になる。単純にどちらもやりたいのだ(我儘)

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相変わらず遊びにも行かず誰にも会わない日常で、ライブが無かったら俺は人としてほぼ終わってるよなぁと帰り道を歩きながら思う。何が怖いってそれを苦にしていない自分の感情がどこか欠けているような気がして怖い。みんな誰かの為に生きているというのに俺にはそういう部分が全く無いって状況なわけで『俺は本当に生きているのか?』と疑いたくなる。そして誰かに演奏を依頼されて自分の生存を確認しているわけだが、そのうち呼ばれなくなる日が来るだろうし、さてどうしたもんだろう…?と考え出すと真っ白だ。チェンライの星空はスゴイらしい。良い機会なのでゆっくり考えてみよう。

本日はたいして意味のない日記

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昨日は良い天気で風が乾いていて雨季の終わりも近いのかな…と思わせた。いつものサイクルで考えるともう少しかかると思うけど、雨が降るとその後サウナみたいな状態になる俺にとって最悪の時期が終わってくれるだけでありがたい。電気機器の壊れる時期ってのはなぜか重なるもんで、今月は壊れまくった機材とPCの修理代で久々に出費がかさみ過ぎて困窮している。なんとか耐えきれるとは思うがとても大変な状況である。

ここのところ録音用の資料で送られてきた洒落た音楽を聴くことが多かったが、飽きてきたのでINUを聞いていた。80年代の作品だけどガラが悪いしやさぐれ感がスゴイ。曲が始まる前の喧嘩が始まりそうな殺伐とした客とのやりとりの末にオチがつくところが関西人らしくて良い。俺のイメージの中のパンクはこの感じ。アウトローだ。なので、昨今巷でパンクと呼ばれている音楽は音のでかいポップスでしかない。当の町田町蔵町田康と名前を変えてすっかり文化人の体なわけで、もうこのようなやりたい放題みたいなバンドの時代は終わっているようだが、このようなバンドを見て衝撃を受けて『ミュージシャンになろう!』などと言う大きな人生の選択ミスをした俺としては、たまにアンダーグラウンドで異様にテンションが高くてそれが故に人気の無いバンドを見ると応援せずにはいられない。

ここのところの英語教材は Cowboy Bebop の吹き替え版。これはこれで90年代臭がスゴイ。この作品は1998年の作品で好きな作風だけど俺はほとんど内容を知らない。なので英語だと内容を把握するのが大変。勉強には良い。興味が無い教材は見るのが苦痛だし。この作品が話題になっている頃はちょうどデビューに向けてのオーディションが続いていて曲を作るので手一杯で、肉体労働のバイトをしながら深夜に曲作りの作業をしていてテレビを見ている暇がぜんぜんなかった。サントラが売れたことでも有名な作品だけど、それを知ったのも2000年代に入ってからだった。

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宮市亮が大きなケガから復帰した試合でゴールした。ゴール後のセレモニーの写真の表情は決意に溢れている。チームメイトが復活を祝福する表情も心から嬉しそうで泣けるシーンだった。

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今日、明日は録音の仕上げに向けた足りない部分の曲作り。安易に模倣せずに自然体でコマーシャルな音楽を創るってのは長年我流の音を演り続けている俺にはとても難しくて、どうしても妙な力が入ってしまう。今回の録音の相方を頼んだラスベガス出身だけどほぼ中身がタイ人になりつつあるアメリカ人のトミーは10代の頃から才能を認められて色々な形でずっと作品をリリースしている生粋のアーティストなので純粋な彼とやるのは楽しい。5年前に出会った時から彼は人の評価を気にせず全く己を曲げずに進化し続けている。俺が尊敬している若いミュージシャンのひとりだ。作業の合間に作りかけの新曲を聞かせてもらったが既に素晴らしい音だった。

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今回依頼されて作っている音楽が今後どのような評価を受けるかは正直わからない。気に入られれば大きな仕事もあり得るが、『きっちり創る』ことを優先すると決めてやっているので気に入られない可能性もある。『仕事だから…』とか日本にいる頃は過剰に思っていたが、今は少し違う。もちろんできる限り期待に応えようとは思っているが、あくまで俺の基準において作る。結果が次につながらなくても良いと思っている。若い頃は生活で苦労していたので、金が欲しくていろいろ意見を聞きすぎて誰が作ったんだかわからない作品を作ってしまう事が多々あった。あれは双方にとって意味が無かった。全員と理解し合える人間はいないし、感覚的なことであれば特にありえない。妙な雇われ根性は結局邪魔になるだけだ…ということで最後に最近感銘を受けた元政治家の座右の銘を書く。

うるせぇ By 杉村太蔵

とりあえずやってみる

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本日は夕方からBrown stone studioの2階にあるTommyのプライベートスタジオでレコーディング。正直ぜんぜん考えがまとまっていない。映像絡みの仕事なので短いが展開は細かくある程度ゴージャスにしなくてはいけないが、よくあるパターンで録音するのは嫌(単なるわがまま)だし、サンプリングの組み合わせだけで作ってしまうのも嫌(わがまま)なのでいろいろ考えてみたが流石にギターだけでは成り立たない…とりあえずスタジオでパズルみたいに組み上げるか…という具合で自分で自分の首を絞めるパターン丸出しである。何とかするしかない。

このような仕事の常で〇〇っぽくと皆さん簡単に資料として一流ミュージシャンの完成された作品の一部など提示してくれるが、一流の彼等が才能の上にどれだけの時間とスタッフワークと予算をかけてそれを作ったのかは考えていないようで、作り手もPCで安易にそれを模倣して仕事をしてしまうもので、それが積み重なってどうでも最終的にどうでもいい音になってしまうのである。実は今回もある程度ネタは考えてみたが、どうにも面白くなかった。色々踏まえた上で今回も伸るか反るかの勝負と相成った。相方として付き合うトミーには悪いが、がんばっていってみよう ♪

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このバンドすごくかっこいい。ゆるゆるであったかいギターの音色も素晴らしいし、ナチュラルな声のハーモニーも最高。俺が普段ループで作る音楽は音が重なり合ってどうしても混沌とするので、バンドで息を合わせることでしか表現できないシンプルで生々しい演奏に魅かれる。

俺も今日はいい音を作ろう。楽しみだ。

 

 



As Tears Go By

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あぁぁ楽しいっ!!ルーパーがひとつ修理から帰って来て久しぶりに2台回してみるとやっぱり自由度がぜんぜん違うので好きなように絵が描けてとにかく嬉しい。もうあと3つ(笑)修理中なので、修理から帰ってきたらアホみたいに全部つないで遊ぼうと心に誓う俺である。実際のライブでは全部つなぐと音質的にムリなんだけど、もし音質を落とさずにやれるもんなら10台くらい用意していろんな楽器を回してみたい。

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目下の悩みは枕である。毎日首を寝違えたような状態が続いて悪化していくので頭が痛いわ首は回らないわで大変だ。寝れば寝るほど体調が悪くなるという恐ろしい悪循環。先週から曲の組み立てを考え続けていて飯を選ぶのも面倒臭くなって同じものばかり食ってるし、遺憾とは思いつつ何もかもが面倒で、ろくでなし道をまっしぐらな日常。

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ここから先は少し悲しい話。

山本KIDが亡くなった。日本の総合格闘技の選手で一番好きだったのでとても悲しい。つい最近も試合を見直していた。その後、ガンで闘病中だと発表されたが1ヶ月もしないうちに亡くなってしまった。ここ数年若くして亡くなる人間が多すぎる。

俺の母も30代でガンで亡くなった。一度祖母に読ませてもらった母の死ぬ間際の日記は『生きたい』という言葉で埋めつくされていてとても悲しかった。読みながら泣きすぎて俺は疲れ切ってしまった。まだ子供だったのでわかっていなかったが、母の死期が迫っていた頃に最後の家族旅行に行った。ホテルに泊まって久しぶりに家族みんなで風呂に入った。ハッキリ憶えているのは母の痩せ細った身体と乳がんの手術で取ってしまった胸の大きな傷痕だ。俺はある程度状況を理解できていたので一生懸命母の前で明るく振舞った。母はずっと入院していたので久しぶりに一緒にいられるのが嬉しかったけど、正直言ってそのえぐれた胸は死を感じさせてただただ恐怖だった。あの光景は一生忘れられないだろう。旅行から帰って病院に戻った母はしばらくして亡くなった。その後、親父と母の死について話をしたことはないが、どれだけ悲しかっただろうと想像するのが嫌なのでこれからも聞くつもりはない。とにかく俺は普段死について考えないようにしている。ただ、命日が近づくと必ず思い出す。あと半月ほどで母の命日なのでいろいろ思い出していたところにKIDの訃報でとにかく悲しくなってしまった。死について考え出すとキリが無くて困るが、いつも輪廻転生の概念は救いなんだという結論に辿り着く。俺はタイ人の明るさやおおらかさに救われているのかもしれないとここに住んで7年目の今になって思う。

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写真は3年前に行ったシーチャン島で見た夕日。夢の中にいるような景色だった。たまには自然の中に行かなくてはいけない。特にこんな心持ちになった時は空を見た方が良い。都会は空が狭いので自分を見過ぎて心が狭くなる。大きな空や雄大な景色を眺めて『俺ってめっちゃちっちゃいな~(笑)』と思った方が気が楽になるのだ。チェンライとチェンマイは空が広い。汚れた心を洗うには良い場所だ。

 

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