An "I " Novel from The City Of Angels

Diary 『バンコク在住日本人ギタリストの日記』

最良の状況を作れていないことに自己嫌悪する

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写真は土曜日のRendezvousの様子。

MathewとDJのシンキチくんと写真には写っていないが前方に桜井響くん。予定外のセッションだったけど、リラックスした雰囲気で悪くない感じだった。しかし、最終的には各々のソロの方が間違いなくクオリティーが高いと感じたので、セッションとしては最高の結果ではない。長い年月の間に相当な数のセッションをやってきたが、未だにどのようにするのがセッションとしてベストなのか結論は出ない。ただ、ソロでは起こりえない奇跡のような瞬間を過去に何度も経験したので、その可能性を考えるとやめられない。ただ、演奏者皆が音楽の可能性を信じていないとそれは実現できない。俺のやるべきことはそれを言葉ではなく演奏で体現することだ。単純にまだそれを音だけで共演者に伝えるには腕が足りないんだろう。

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こんな真面目な反省話を書いているのは昨夜も演奏者としてありえない選択ミスをしたからだ。2夜連続で目に見える結果を出せないってのは流石に反省せなしゃーない。

昨夜は毎度おなじみ押せ押せのタイムスケジュールで40分の持ち時間が30分に。さらにその持ち時間を2組のアーティストで分けたのだけど、接待的な気分で自分に不利な条件を飲んでしまった。冷静に考えて自分がやりにくい状況であるのに、それを飲んだ自分の甘さにうんざりする。自分に振られたステージを自分で譲ったみたいなもんである。その上、10分でも結果は出せるのにそれを実現できなかったステージ構成の甘さとか不器用さにもうんざりする。だいたい自分から前座に回るなんてのは緩すぎる。今すぐ死ね俺。ぬるいんじゃやめてまえボケ…等々、昨夜から自分に対する罵詈雑言が延々脳内で炸裂している(笑) 演奏に人の良さはなんの意味もない。結果だ。パフォーマンスに最良の状況を作り出すのも演奏のうちなのだ。良い人だとか優しいなんて言われてもクソの役にも立たない。実際演奏したが苦い気分だけでポジティブなものは何も残っていない。これでは遺憾。こんな間抜けは一度死んで出直した方が良い。

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とりあえず飽きるまで自分を罵倒したら次に向かう。

演奏は悪くない。その他の部分に大幅な修正が必要。

本日は以上。

Rendezvous at BAR 12×12 (Thonglor 18/1)

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Rendezvous】at BAR 12×12 (Thonglor 18/1)

今夜はトンローの BAR12×12 で長時間のアンビエントセット。営業時間中弾き続けるというコンセプトの企画で不定期開催中。先月は日本からたくさんのアーティストが来タイしていたのでやらなかった。

基本的に通常営業中のお店ではオリジナルを演るミュージシャンはやりにくい。集中して聞いてくれないし…音楽を聞きに来たわけじゃないからね…音がデカいとすぐ怒られるし…そらそうやな…おまけに人が動かない分、状況的にはストリートよりやりにくい。ストリートは聞きたくない人はその場を離れれば良いのでまだ楽だ。

そんなわけでひじょうにキビシー感じなのだけど、俺はこれが結構楽しい。

同じ空間にいる不特定多数のお客さんとスタッフの動きを視野に入れて話し声やグラスや食器の触れ合う音や同じ空間で起こっていることを意識してそれに対してアプローチするってのは、セッションの相手がミュージシャンではないってだけでフリーセッションとほぼ同じ状況だ。バランス感覚とか最低限で効果的なボリュームコントロールを鍛えるのによい。ただ、爆音轟音でしかやらないとか静寂の中で繊細な表現をしたいというようなこだわりのある奴はわざわざやる必要はない。誰も得しないし、お客さんやお店のスタッフと揉めるだけでなんの意味もない。俺も最初は慣れるまで良く怒られたり文句を言われたりした。デカい音が好きなので俺が俺がって感じになりがちだったのだ(笑) ライブとは違って不特定多数の普通の方々が楽しみに来ているプライベートな空間で好きな音を出そうってわけで、やっぱりそれなりの優しさとかクオリティーは必要なのだ。乱暴な音で皆さんの素敵な夜を台無しにしてはいけないのである。

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そんな感じで様子を見ながら、突然短いノイズを放り込んで驚かしてみたり、聞こえるか聞こえないかのフワフワした音で存在感を消してみたり、思い付きでPOPSを放り込んだりしながらゆるやかに夜は深まっていくわけです。

今夜は途中で Mathew というフランス人が1時間ほどマシンドラムでセッションに参加する。テンションが高くてものすごい高速でしゃべる。しゃべりだすとこちらが落ち着けと止めるまで止まらない(笑)どうなるんやろ…まあ楽しんでいこう。

 

たまには目線を変えた方が良い

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俺は敬虔な仏教徒ではないけれど一応自分は仏教徒だと思っている。たまにお寺に行くと気持ちがリフレッシュされるのでふらっと行ってはしばらく本堂のど真ん中に座る。昔から変な癖があって部屋の中心を確かめたくなる。中心を決めて仏像の位置とか照明の位置が芯ずれしていないかとか確かめたくなるのだ。そのかわり、お寺の名前だとかなにが有名なのかとかはほぼ何も気にならない。とりあえず小さかろうが大きかろうが雰囲気が気に入ればどこでも良い。写真は今までで一番壁の絵の細工が素晴らしかったアンポワーのローカルなお寺。レリーフの保護の為に普段は締めきっていて見られない内部の美術を幸運にもゆっくり見させてもらった。お寺の人が『お前わざわざ日本から見に来たのか!?』という感じで盛り上がって見せてくれたので、たまたま通りかかったとかバンコクに住んでいるってのは内緒にした(笑) 今のところ一番心に残ったのはこのお寺だ。こんな精緻な細工を時間をかけて造り出す人間ってのはほんとうにすごい。この『手』のおかげで人間は進化したわけで、全世界的に職人にはもう少し敬意と金を払うべきだと思う。このままだと虚構の中で金を生み出す人間しかいなくなってしまうと素晴らしい手仕事を見る度に思うのだ。

ビザの関係でよくいくビエンチャンにも気に入っているお寺がいくつかあって時間ができるとふらっと歩いて行ってみる。タイよりも古いお寺が多くてお坊さんがワイルドでかっこいい。チェンマイにもとても良い佇まいのお寺がたくさんあって木造の建築が特に美しい。そのうちチェンライにもお寺を見に行ってみたい。バンコクのお寺は綺麗なんだけど金ピカ成金趣味で土着のアニミズムやらバラモン教やら土地柄なのかいろいろな国の宗教のエッセンスが混ざっているカオスな感じで日本のお寺とはまるで方向性が違うのが興味深い。個人的にはこの曖昧でなんでもありな感じが仏教の良いところだと思っている。

今日はエカマイの駅前の改装したてで金ピカド派手なお寺でゆっくり座ってみた。街中だけど良い風が吹いていてやっぱり特別な空気が流れていて、心の風通しも良くなったような気がした。

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ここのところえらく首が痛いし肩がこるなぁと思っていたが、どうやら原因は3カ月前からやっと使い始めたスマホだ。それ以前は小さな旧式の携帯電話とi-padだったので必要な時以外は持ち歩いていなかったがi-padが壊れたもんで変えたんだけど、要するに首の痛みは小さい画面をうつむいてのぞき込んでいる時間が増えたのが原因だった。勢いでスマホを捨てそうになったが、見なけりゃいいやってことで意識して使う時間を減らして街を見るようにしたらマシになった。

昨夜、近所の屋台に食事に行ったら隣の席のタイ人のカップルがそれぞれイヤホンをしてスマホで別々のテレビ番組を見ながら食事していてかなりビックリした。彼女と夕食に来ているのにそんな状態って想像すらしたことなかったし…まあ人それぞれやりたいようにやればいいんだけど、ここのところは俺も食事中にネットのニュースとか見ていたので周りを見ていなかったんだな…と反省した。身の回りでもいろいろなことが起こっているのに画面に夢中で気づいていないってのはもったいない話だよな。せっかく異国で生きてるんだしまだ知らないこともたくさんあるわけだし。

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先日、FBでベース弾きの先輩の紹介していたNEO SOULのギタリストCharles Berealのこの曲を聞いて以来、『めちゃかっこええ音!』と久しぶりにギターの音色とフレーズにドハマりしてひたすら繰り返して聞いている。20代の頃はACID JAZZが流行っていた影響でけっこうFUNKやSOULも聞いていたんだけど、即興を始めてから音楽自体を聞かなくなっていたもので、最近の曲やアーティストをぜんぜん知らないなぁと思って今いろいろ聞いてみている。すると刺激されたのか最近じゃ思いつきもしなかった新たなフレーズが生まれたりするのが楽しい。何かに集中すると気づかないうちに視野が狭くなってしまうけど、柔軟さを失くしたら遺憾なぁと思う今日この頃である。

気合の入った女性にはかなわない

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言葉ってのは常套句として繰り返されるたびに形骸化していってしまう。なので思い入れもなくリスペクトって言葉をやたらと口にするのも口にされるのもあまり好きではないのだけど、ジャマイカで活動している日本人女性レゲエシンガーの Rankin Pumpkin には素直に言える。彼女はスゴイ。

Respect !!

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彼女がジャマイカの人気番組に出演した初の日本人コンテスタントであるとか、出場しただけでなく勝ち抜いているとか、もちろんそれ自体も素晴らしいことだけどそういうことがスゴイと言っているわけではない。動画で見ればわかるが、彼女はスキルではなく言葉でジャマイカのお客さんの心を掴んでいる。同じ番組の他の動画を見比べればわかるが、お客さんが地元のシンガーのステージとは明らかに異質な反応をしている。

例えば俺は言葉がない音楽をしている。音だけならば万国共通だ。下手に言葉を入れるよりシンプルに伝わるので逆に異国での活動には向いていると自分でわかってやっている。外国で活躍している日本人にテクニックで押していくミュージシャンが多いのはそのせいだ。要するに母国語ではない言葉で歌って観客に何かを伝えるってのは本当に難しいことなのだ。

FBに書かれた本人のコメントによれば、コンテストを勝ち抜いていく過程で顔が売れていくにしたがってジャマイカのネット上では賛否両論喧々諤々。日本でいうネトウヨのような輩たちの書き込む悪意のあるコメントも多いらしい。その悪意に負けるどころか、それを逆手にとって「Dem Vex(彼らは気に食わない)」というリリックでもう一発パンチを打ち返すってのは矢面に立つ勇気と確固たる意志が無くてはできない。でも彼女は俺が書いているみたいにごちゃごちゃ考えてやっているわけではなくて、自分の目標の為にどうすれば良いかを考えて真っ直ぐにそれをやっている。胆の据わった女性は強い。感動してしまった。

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ちなみに、バンコクの俺の周りで一番仕事をしている日本人DJも女性である。DJとギター弾きで少し違うとはいえ、俺のステージの数は彼女のこなしている仕事の半分にも満たない。これまたかなわんなぁと思うのである。

最近会った友人達

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Sonia Hamza

SOYSAUCE BARで開催されたアートエキシビジョンで出会ったフランス人のアーティスト/フォトグラファー Sonia Hamza。不思議な存在感のある人だった。写真の作品は元カレの日本人ドラマーの顔だと言って白塗りの顔で笑っていた。ホラーだった(笑)

俺の音を気に入ってくれたようで、次回来タイの際はなにか一緒にやりたいというメッセージが届いた。またひとつ楽しみが増えた。

 

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benisabbah.bandcamp.com

BAR 12×12でやったDJ JEROMのリリースパーティーでタイの伝統楽器ピンをダブで飛ばす Beni とトリオで演った打ち合わせ無しの即興セッション。重た~い感じの音でぜんぜん売れない感じやけど楽しかった。いつのまにか Stratophere Trioって名前がついている。訳すと《大気圏トリオ》… ちょっとお笑いユニットっぽい。時間が合えばそのうちまたやるだろう。

Jeromは間も無くリリースツアーで大阪、京都にDJプレイしに行くようだ。さすがにDJ用の機材と写真の膨大な演奏機材は同時に運べないらしい(笑) 興味のある方は是非行ってみて欲しい。

 

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つい先日会ったBlood Shakers のフレド。2年前に一時期バンコクに住んでいた。この前Stylish Nonsense の POKさんのライブに顔を出した時、会った瞬間に『Hey!Guitar man!久しぶり!俺を憶えてるかい?』と言われてびっくりした。だいぶ前の話なのですっかり忘れていたが、以前出演したライブで俺が弾き終わった時に『よかったらこんど一緒にやろう』と声をかけてきたのをライブを見ながら思い出した。その後何度か声をかけてくれたが、その頃の俺は日々に追われていて自分のライブをこなすだけで目一杯だった。

ここのところファランのバンドマンによく誘われるけど、やっぱり余裕がないのでセッション程度しか参加できない。バンドを続けるってのはマジで大変だ。なので上手くいってるバンドってのは奇跡みたいなもんだ。だからこそ価値がある。

 

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俺は愛想が無さすぎると最近良く反省する。言葉の問題じゃなくて性格の問題だ。ライブで会った連中に街で出会った時に談笑することがほぼ無い。話す事柄が見当たらないってだけなんだけど、それでもひとしきり話をしようとするのが礼儀ってもんだよな。

今のところ俺が普通に話をする異国の友人は一緒に活動しているほんの数人だ。かなりの人数と会っているのでもう少し社会人らしいコミュニケーション能力を持たないとあかんよなぁ。

バンコクのライブスポット②

バンコクライブスポット紹介第2回。

③ BAR 12×12 (Thonglor 18/1) 

https://www.facebook.com/12-x-12-389978477876239/?fref=ts

トンローの住宅街にある隠れ家のようなBAR。大音量のバンドには向いてないが店に入ると非日常感があってサウンドシステムも充分でいい感じ。基本DJがプレイしていることが多いが、写真のように機材を持ち込んでライブをやっている時もある。バンコク在住の音好き日本人の憩いの場でオーナーのヒロシマンが基礎工事から手作りで作りあげて今も日々進化し続けている。日本人が多いエリアだけどタイ人やファラン(タイで欧米人を呼ぶときの総称)韓国人のお客さんも多くてバンコクらしい何でもありな雰囲気。ツアーに来るアーティストや DJ が多数出演していて日本ではありえない入場料で至近距離でリラックスしたプレイを見られる。普通に飲みに行ってもええ感じです。

写真)CHAOS JAM < Stylish Nonsense × KOTA TAKI >

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④Fatty's BAR and DINER

https://www.facebook.com/fattysbardiner/?ref=ts&fref=ts

アメリカ人ミュージシャン Matthew Fischer 経営のロックなお店。初めて行ったのは日タイ混成ハードコアバンドLOWFATのリリースパーティーだった。ロックやカントリーブルース、HRにパンク等々の音のでかいバンドが狭いお店で思いっ切りライブをやっているってのが衝撃的だった。夜遅くまでガンガンやり過ぎて怒られたようで最近はライブは早めの時間に終わっているようだ。イベントの無い普段の日は文字通りFattyなハンバーガー中心のアメリカンフードでビールに良く合うし、お客もスタッフもフレンドリーで気楽に飲める。場所は少々わかりにくいのでスマホ活用で。

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俺がバンコクに来た頃はまさにやりたい放題って感じで『マジか!?』と驚愕するような場所でとんでもない音量でバンドがライブを演っていたのだけど、昨今はさすがにタイと言えど世知辛くなってきていてイカれた連中の集まる店はなくなったり方向転換せざるをえなかったりしている。当たり前やけど寂しい話やな。

本日は以上。

公共の場で音を奏でる

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バンコク・トンローのThe Commonsでの演奏風景。これは多分俺が弾き始めた17時半くらいの光景。この後20時までお客さんがわいわい賑わっていた。ここは有名人や芸能人の多いトンロー界隈の最新スポットって感じで近隣の洒落た皆さんが集っている場所で、ヨシタケ君はミナミにビックステップができた頃の喧騒を思い出すと言っていた。日本との違いはここにはタイで言うところのハイソ(要は金持ち)しか来ないってところだ。キッシュ一切れに生野菜少々で一皿220バーツ。一歩外に出れば屋台のご飯が一皿40バーツ。すべてにおいてこんな感じの値段の差があって普通のタイ人のお客さんは来ない。要は値段で来る人が選別されている。女性だけじゃなくて男性も手入れが行き届いているので毛並みの良い血統書付きの猫がたくさんいるみたいな印象だ。もちろん貧乏ミュージシャンの俺は40バーツの飯を食う。野良猫みたいなもんだ。

俺のソロは1時間弱の演奏だったけど、目の前を行き交う皆さんが興味深そうに覗き込んでいったり、ガン無視でおしゃべりに夢中だったり、赤ちゃんが目を丸くしてじっと見ていたり、知り合いが気づいて手を振ってくれたり…という感じでゆっくり時間をシェアする感じが楽しい。演奏の半分くらいが即興演奏だったけど、自分でもびっくりするくらいPOPなセットだった。館内にも音が流れていたのを知らなくて、大きなガラスの向こうで思い思いに過ごしているお客さん達が聞こえるはずがないのになぜこちらを見てるんだろう…?とか不思議に思いながら、こちらも着飾ったお客さん達を観察していた。良い企画をしてくれた若い友人に感謝。

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ホームタウンの神戸三宮や大阪梅田でも一時期ストリートでアンビエントをやっていたが、ええ感じになればなるほど警察やらヤ〇ザの皆さんが嫌がらせに来てなかなか厳しい状況だった。自由の国タイといえども公共の場でいきなり演奏ってのは揉め事の原因になるし警察はよりややこしいしであまりよろしくない。なので、今回のように許可をもらって演奏できるってのは貴重な機会。そんな流れが来ているのか、昨日もバンコク市内で正式に許可を取ってバスキングのできるスポットを教えてもらったので早速申請に行ってみようと思っている。いつものように音楽目当てのお客さんが観に来てくれるライブやパーティーでのショーケースとはもちろん違うし、衆目を集めることが第一義のストリートバスキングともまた目的が違うのだけど、今のスタイルで演奏を始めた時からアンビエントミュージックを生で演奏するってのは時間と空間と人のセッションなのだと思っていて、それを磨くのに最適なのは公共の場所だった。うまくやらないと本当にぜんぜん聞いてくれないのでバンドマンやシンガー達は嫌がるが、俺にとってはいろいろな国の人が集まるバンコクの商業施設での演奏は最高の実験の場だ。空気を掴むまではさんざん悩むが、良い演奏をすれば結果的に金も稼げるし言うことない。

運河沿いの下町を歩くと軒先に鳥籠を吊っている家がある。街の喧騒と美しい鳥の鳴き声を聞きながら、腰布を纏ったおじいさんがまったりタバコを吸っている。おじいさんの傍らには猫が数匹寝そべっていて俺を避ける気配もない。バンコクの下町の夕景はとてものどかで美しい。大事なのはテンポだ。俺たちは急ぎ過ぎている。

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近隣では猫の出産ラッシュで夜道を歩くと子猫だらけで俺は立ち止まってばかりだ。タイの野良猫は警戒心が薄い。それは住人がみんな優しいからだ。いつか街の風景に溶け込むような優しい音楽が作れると良いなといつも思う。